【福岡発!MoradoTangoさんの連載 No.001】
この色、『タンゴブルー』と言う らしい。
魅力的なデザインに惹かれて買った一足。
魅力的なデザインに惹かれて買った一足。
細くて高いピンヒール。
華奢な胴体。
華奢な胴体。
流れるような曲線が作り出す、美しいカーブ。
繊 細なストラップ。
黒・赤・ブルーなどに代表される、艶やかなタンゴカラー。
女性が履くタンゴシューズには、まるで媚薬がふりかけられているようだ。
タンゴシューズを眺めるたびに、心がときめく。
若い頃、パンプスが大好きだった。
スリット入りのタイトスカートに、細くて高いヒールのパンプスを好んで履いた。
大人の女性に憧れて、黒のシーム入り のストッキングを履いたりした。
やがて、私は結婚して子どもができて、高いヒールの靴は履かなくなった。
あれからずいぶんと長い時間が過ぎて、今また、細くて高いヒールの靴が
私の手の中にある。タンゴを踊るために・・・。
タンゴシューズを履いた私は、ただの女。
妻でもなく主婦でもない、ひとりの「女」として存在する瞬間。
そういえば、「生まれ変わるなら男がいい!」なんて思ってた時期もあったなぁ。
女性は社会の中で男性よりも一段低い者として扱われてきた、というフェミニズムの
考え方に夢中だった。その頃の私は、女性として生きて いくのが辛かった。
10年後の今、こんな風に、女であることを楽しむ日々がこようとは 想像もしなかった。
タンゴを踊っていると、よくわかる。
男と女は一対であり、しかしそれぞれ自立した「個」で あることが・・・。
男性のリードを受けて動いていても、女性はそれに依存することなく、
たえずお互いにコミュニケーションをとっている。
お互いに自分の足で立ち、相手への尊敬の念があってこそ成り立つ踊りだと思う。
言葉で取り繕うことができない分、それは純粋で、もっともシンプル なコミュニケーションかもしれない。
タンゴを踊ることは、それほどに”深い”ことでもある。
あのピンヒールのタンゴシューズを履いた足で、コンタクトされるとき、
男たちはいったいどんな気持ちなんだろう。
一度聞いてみたい気もするけれど、それは野暮というものでしょうね、きっと。
タンゴの美学にタンゴシューズはぜったい欠かせない、と私は思う。
タンゴシューズを履くことで、女はよりいっそう輝きを増すものだから・・・。
MoradoTango