[特別インタビューVol.1] Roberto & Lam

「タンゴが好き!」 では、「タンゴって何?」って興味を持っている人から、「タンゴってどうやって楽しめるの?」って思っている人まで、タンゴが持っている様々な「ここが面白い!」をお届けしたいという気持ちを込め、日本のみならず、海外でタンゴを楽しまれている方々にインタビューを行っていこうと思っています。

第一回目ではブエノスアイレスでタンゴダンサーとして活躍され、その表現で私たちをいつも魅了し続けてくれる Roberto&Lamさん にお話を聞いてみたいと思います。

― Tomoko 「こんにちは。今回はよろしくお願いします。いつもFacebookなどでお二人が活躍される姿が届くのを楽しみにしています。」

Roberto&Lam 「いつもブログやFBを通して、私たちの活動を見守ってくださり、ありがとうございます。」

― Tomoko 「早速ですが、こちらに届いたお二人への質問がありますのでお伺いしていきたいと思います。お二人は、何歳からタンゴを始め、そしてそのきっかけは何でしたか?またお二人が出会ったきっかけ、そして今に至るまでをお聞かせいただけますか?」

Roberto&Lam 「ロベルトは、20歳のとき、テレビでオズワルド・ソットが踊るのを見て、タンゴに魅了され、見よう見まねでタンゴを踊り始めました。 アルゼンチンでは市民対象のタンゴアカデミーがあり、ロベルトは5年ほどそのアカデミーに通い、タンゴ理論や歴史を学びながら、ミロンガやレッスンへ通いタンゴを習得していきました。

ラムは、30歳まで国際機関に勤めていて、ダンスとは全く無縁の生活をしていました。スポーツは大好きだったのですが、ダンスは苦手で、まさか自分がダンサーになるとは夢にも思っていませんでした。ふと、仕事ばかりしている自分の姿がイヤになり、習い事でも始めようと広告を見ていると「アルゼンチンタンゴ」が目に飛び込んできました。タンゴってどんな踊りだったっけ?!?と思いながら、足を運んでみると、そこでは亮&葉月先生が教えてらっしゃいました。お二人の素敵な踊りと人柄と惹かれてタンゴにのめり込んでいった感じです^^;

タンゴを始めて2年経った頃、ブエノスアイレスに行きたくなり、思い切って仕事を辞め6ヶ月留学しました。亮&葉月先生のスタジオでは、先生を始め皆熱心にアルゼンチンへ短期留学をされていたので、私も自然に行きたいと思うようになりました。

2008年に文化庁新進芸術家海外留学制度の研修生に選ばれ、1年アルゼンチンに留学させていただく機会を得、その頃、とあるミロンガでロベルトと出会いました。それから自然に一緒に練習するようになり、練習といっても、ロベルトに教えてもらうことが殆どでしたが^^; 、またメトロポリターノや世界大会など一緒に参加するようになりました。日々、タンゴを勉強しながら一緒に創りながら、気がついてみれば、現在ブエノスアイレス拠点に教えたりエキシビジョンをしたりと活動しています。」

― Tomoko 「ペアダンスとしてのタンゴならでは質問も来ています。相手を理解していくために心がけていることなどあればお聞かせ下さい。」

Roberto&Lam 自分が知らないことがある、ってことをいつも心に留めておいて、相手が言っていることを聞く、ことかな。

タンゴを数年勉強していると、自分が習って来たことが全てに感じたりしますが、ブエノスに来て思うことは、『私はまだタンゴを知らない』ってことでした。

ロベルトがこうやってみて、と言うことが、自分が習って来たことと違うと戸惑いがありましたが、まずは彼の言うことを全部やってみよう、って思いました。

今では彼も私の言うことに耳を傾けて、やってみてくれますが、まぁ、タンゴは男性主導の踊りなので、聞いてる振りして自分のやり方を通す、ってところも多々ありますけどね^^;でもそれで良いんだと思います。男性が主導でなくなるとタンゴではなくなりますからね〜」

 ― Tomoko 「多くのことを吸収するために、自分自身をオープンにしておくことが大切ですね。ところで、ブエノスアイレスという土地でダンサーをしているお二人の日々の生活にも皆さん関心があるようです。典型的な一日の過ごし方について差支えない程度で構いませんのでお話していただけたら。」

Roberto&Lam 「はい、朝は早く起きません(笑)。といっても10時くらいには起きて、朝食をとりながらメールなどの返信を1時間ほどします。その後、それぞれストレッチやウォーミングアップを1時間ほどし、昼頃には二人で組んで1、2時間ほど練習します。

午後はプライベートレッスンやそれぞれの仕事、私はアンジェリーナシューズの仕事をしています。

夕方はほぼ毎日グループレッスンをしています、その後食事をとって、それぞれ別の仕事をしたり、テレビを見て休む。

私たちがミロンガへ出掛けるのは週2、3回かな。自分たちのデモがあるとき、友達が踊るとき、挨拶しに行くとき、くらいです^^;」

― Tomoko 「お二人の生活についての続きですが、食事についての質問も来ています。ラムさんは、日本食を作られていますか?そしてロベルトさんは、日本食はお好きですか?」

Roberto&Lam 「私たちは殆ど家で食事をします。ブエノスに住んでいる感覚だと、外食は高いので、友達が来たときなど特別な時だけですね〜。

日本にいる時から日本食はあまりつくらないほうだったので、今もあまりつくりません^^; でも、ご飯だけは炊きます。

ロベルトは日本食が大好きなので、親子丼などたまにつくりますが、基本的にはこちらの食事ですね〜。」

― Tomoko 「昨年ブエノスアイレスを訪ねた際にミロンガだけでなく、音楽を聴く場所には事欠かくということがありませんでした。お二人もダンスのため以外に音楽を楽しむためにタンゴを聴くことはありますか?そういえば、お二人のダンスの選曲が素敵ですね。音楽の趣味はやはり一致しているのでしょうか?」

Roberto&Lam 「そうですね、生徒さんにタンゴ歌手の方や演奏する方がいらっしゃるので、彼らのライブにちょくちょく足を運びます。頻繁に行くことはないですが、引退記念公演やスペシャルなイベントなどはよく観に行きます。

音楽の趣味は一致しているか?どうかな〜泥臭いタンゴが好きなのは似てるかも。

踊るときはロベルトが独りで選曲して、私はピスタ(*フロアー)に立つまで知りません。というか、今日何踊るの?って質問もあまりしませんね^^; 私は事前に同じ曲で何度も練習するのが好きじゃない、というのもいざ踊るときに新鮮さや集中力がなくなります。全てインプロなので、インプロ感が薄れるし、見ていても計算されすぎているタンゴはあまり好きじゃない。私は特に女性なので、女性が音を計算するとロクなことがない、って思いますし、だからロベルトも事前に私に教えないんだろうな、と思います^^;

あと、私たちがデモをするとき、ロベルトはミロンガの雰囲気や来ている人たちが好む曲を選曲しているようです。例えば、シンルンボの人たちはこれが好きだろう、グリセルはこう、などなど。ブエノスのミロンガにはそれぞれ来ている人のスタイルや色がハッキリしていますから、雰囲気の違うことをすると受け入れられない空気がありますね。」

― Tomoko 「曲に先入観なく入っていく、やっぱりインプロで踊るサロンタンゴの醍醐味ですね!個人的に、場所に合わせての選曲という部分がとても興味深いです。またいつか詳細をお聞きできたらと思います。あ・・長くなっていますが、あと少々お話を聞かせていただいて構わないでしょうか?昨年の今頃お二人は来日されていましたね。その際の日本のタンゴシーンについての感想をお聞かせください。ちなみもう次の来日予定は決まっていますか?」

Roberto&Lam 「日本のタンゴシーンはもちろんブエノスとは違います。ブエノスのミロンガも地域によってかなり違いますので、一概には言えないのですが、それぞれ良い面とそうでない面があります。

日本の良い面は、皆一生懸命レッスンしてタンゴを知ろう!としていること。ロベルトは日本の方のタンゴに対する興味と熱心さに感動していました。皆さん知識はとても豊富ですし、技術レベルも高いですよ、ほんとに。それに比べてブエノスの人は全く学ばない…、無料レッスンでも来ない、なのにウンチクだけは一人前なんだと思います^^; もちろん素晴らしい方も多いですが。ミロンガも皆さん慣れているので、大半の方がスマートなマナーで良い雰囲気を創っていますね。

一つ気になるのは、これは日本ならではの光景ですが、女性が男性を誘うのは良くないと思います。また今度踊ってね!と声かけるのは挨拶のようなもので良いことだと思いますが、目の前に来て一曲踊ってくださる?と声をかけられては男性は断りにくいもの、これはルール違反だと思うんです。男性もしかり、女性が貴方と踊りたいと思っていたら必ず見ているかコミュニケーションを事前にとっているもの、目も合わないのに目の前までいって誘うのも、女性は断りずらいもの、女性にも心地よく選択できるように、男性のプライドを傷つけないようにカベセオというルールがあるのです。

ミロンガは社交の場であって、時には見知らぬ男女がカベセオで踊ったりしますが、殆どの場合、ミロンガに着いたら顔見知りの人には必ず挨拶をかわし、元気?最近どう?などコミュニケーションがあります。誰にも誘ってもらえない、誰も踊ってくれない、と思っている方はちょっと考えて見てください、ミロンガに着いて互いに挨拶をかわしましたか?ホンの一声掛け合うだけで、お互い誘いやすくなるものです。

また、ミロンガは大人の社交場です。先生やオーガナイザーが楽しませてくれる!のではなく、参加している方同士でコミュニケーションを深め楽しい空間を創っていくものだと思います。一人一人がミロンガを創っていく大切な要素です、主体的に楽しんで頂きたいと思います。

次回の来日は、今年の4月になります。今の予定では4、5、6月の3ヶ月、東京を中心に滞在します。詳細は決まり次第ご報告いたしますね。」

― Tomoko 「そうですね、誰と踊るというところは個人のコミュニケーションが自ずと反映されてくると思います。踊り以外の時間に、どんな人と、どんな風に会話などを楽しめるかがポイントですね。最後に、新しくタンゴを始める人へ知ってもらいたいこと、そしてタンゴを続けている人に忘れて欲しくないことがあればメッセージをお願いします。」

Roberto&Lam 私はいつも思うのですが、タンゴへの入り口、きっかけは何でもいいと思うんです。ステージタンゴ、サロンタンゴ、タンゴモデルノ、華やかなミロンガでドレスアップするのが楽しくて!でも何でもいいんです。タンゴという大きなジャンルに少しでも興味をもって始めることで、いろんな世界が広がってきますので是非一歩踏み込んでみて欲しいなと思います。

入り口はどこからでもいいのですが、少しタンゴに慣れてくると、やっぱり「タンゴ」を学ぶ必要があります。タンゴは他のダンスと共通する部分もありますが、独特なテクニックや要素が沢山あります。楽しければ何でもいい、っていうのも一つの考えですが、タンゴに対する敬意がないのは、見ていて悲しくなります。例えば日本の相撲、勝てばいい!ってものではないこと、私たち日本人は理解できますが、他国の人には儀式的なもを理解するのは難しい、でもその日本的なニュアンスにリスペクトがないと日本人として悲しくなりますよね。タンゴも同じくアルゼンチンの文化という側面が大きいので、タンゴから大きくかけ離れていくことは、現地の方にとっては辛いものです。

私もまだまだ学んでいるところですが、タンゴを学ぶのに終わりはない、奥深いものがあります。個人個人のペースでいい、学び続けて欲しいなと思います。

― Tomoko 「日本から遠く離れたブエノスアイレスで生まれたタンゴが身近にある今、ポルテーニョたち(*スペイン語でブエノスアイレスの人たち)が自分たちの文化をどのように育んできたのか多角的に学んでいきたいものです。今日は本当にありがとうございました!ブエノスアイレスという遠い地で活動されているけれど、私たちにとってとても身近なお二人にお話を伺えたこととても幸せに思います。次回は私たちに踊る際の快適さ、そしてファッションとしての美しさを与えてくれているAngelina(アンジェリーナ)という靴についての話をお聞きしてみたいと思います!」

Roberto&Lam 「こちらこそ、ありがとうございました!近く日本でお会いできること、ロベルト共々楽しみにしています!」

 

 

About them…..

Roberto Montenegro ロベルト・モンテネグロ

 

2008年、タンゴショー『ラ・パシオン・デル・タンゴ』のダンサーとして南米ツ アーに参加。2009年にはブエノスアイレスのタンゲリーア『セニョール・タンゴ』の専属ダンサーとして舞台に上がる。また『エスキーナ・オメロ・マン シ』、『カフェ・トルトー二』、『バル・スール』などでショーをおこない、レオポルド・フェデリコ、エルネスト・フランコ、エミリオ・バルカルセ、ホセ・ コランジェロら偉大なマエストロの楽団や、コロール・タンゴ、ロス・レジェス・デ・タンゴなど著名オルケスタと共演を果たす。
タンゴ競技会には2005年より参加。初年にして世界選手権サロン・タンゴ部門で決勝進出、2008年には世界第6位に輝いた。ブエノスアイレス市タンゴダンス選手権ではサロン・タンゴ部門とミロンガ部門で2005年から5年連続ファイナリストとなる。

LAM ラム

タンゴ留学のため幾度も本場アルゼンチンに渡ったのち、2005年から東京でプロのタンゴダンサーとして活動を開始。 プロデビュー後、わずか2年でタンゴダンス世界選手権アジア大会ステージ部門で優勝し、日本を代表するタンゴダンサーとなる。
日本政府により、タンゴダンサーとして初めて『平成20年度文化庁新進芸術家海外 留学制度』の研修員に選ばれ、ブエノスアイレスへ1年間のタンゴ国費留学をおこなう。ナタリア・ヒルズ、カルロス・ペレスらのマエストロに師事。
2009年、留学期間を終え再度アルゼンチンに戻りブエノスアイレス各地のミロン ガでエキシビションやレッスンをおこなう一方、タンゴへの深い理解と愛情から生まれたタンゴシューズブランド『アンジェリーナ』を立ち上げる。

And more…

ロベルト&ラムは、2009年2月のペア結成直後に参加した世界選手権ビセンテ・ロペス大会でサロ ン・タンゴ部門、ミロンガ部門を制覇。同年世界選手権本戦サロン・タンゴ部門世界5位。2010年ブエノスアイレス市タンゴダンス選手権ではサロン・タン ゴ部門4位、ミロンガ部門5位、ワルツ部門5位と全ての部門で入賞。AMBCTA(アルゼンチンタンゴ・教師ダンサー振付師協会)会員。
無駄のない美しい動きを伝授するワークショップ・レッスンでは、ダンサーにとって 『楽器』ともいえる身体の正しい演奏方法・表現方法を体得できるよう、生徒ひとりひとりの体の個性・特性を見極めながら丁寧に指導。現在、ブエノスアイレ スでも名高い『サロン・カニング』の講師を務めている。

Web site

http://robertoylamtango.jimdo.com/

[特別インタビューVol.1] Roberto & Lam」への4件のフィードバック

  1. ラムさんたちがダンサーとして、タンゲーロスとしてどんな風に生活しているのか垣間見ることが出来て良かったですよね。現在次の記事の準備中です。

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  2. Tomokoさん、素晴らしいインタビューでした。
    ラム&ロベルトを通して、一歩タンゴとタンゴダンサーへの認識が深まりました。是非、続けて下さい。2回目も期待してますよ!

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